Stella Adler Acting学びのプロセス
基本テクニックと戯曲解釈クラスは、初級〜中級者向けのクラスです。少人数で、約7ヶ月かけてStella Adler Actingの基本を学びます。希望者はそのあとの発表会にも参加します。シーンスタディクラスは、基本テクニークと戯曲解釈クラス修了者のための上級クラスです。開催時期はその時によって変動します。
1. ヴォイスと身体
演技はまずヴォイスと身体あってこそのものです。長期クラスの最初は、登坂倫子によるリンクレイターヴォイスを用いて、声と身体のワークでスタートします。余計な力を抜き、呼吸と声を自由な状態にして感覚を広げます。俳優の全てのアクション(動き)の始まりはそこからスタートするのです。
目次へ戻る2. イメージと言語
眼の前に対象となるものを想像し、それを見たものをシンプルに口述していきます。たとえば、よく知っている家族や、自分にとって最も美しい場所を、記憶を述懐するのではなく、実際にその場に立たせ、その場を作ってそれをシンプルに口述していきます。演技はその人が視覚的にイメージを具体化出来るかどうかが大きく影響します。これは、のちのセリフの一言一言にしっかりと絵が見えるかどうかのエクササイズです。
目次へ戻る3. place 場所を創り、そこに在ること
イメージが出来たら、場を創ります。演技はplace(場所)が全てを与えます。そしてそこにただ在るということで、周りからの影響を受けることが出来るのです。たとえば、よく街でみかける公園を創り、そこに存在するということを時間をかけてやっていきます。地に足がつき、呼吸し、風を感じたり、音を聞いたり、感覚は広がっていくのです。
目次へ戻る4. 戯曲解釈・戯曲とは
なぜ、戯曲は小説や雑誌のように、人によく読まれないのだろうか。その疑問から、戯曲というものを理解し、そしてその解釈方法に導きます。戯曲とは、様々な人の想像力によって最終的に舞台作品になっていきます。なので、想像の余地が入るからこそ、敢えて未完成のものなのです。スタニスラフスキーの言う、「戯曲とはアクション(動作)の鎖だ」ということを論理的身体的にも、生徒は理解します。
目次へ戻る5. アクションの連動・物語とは
「感情」は演じられるものなのだろうか?否、出来ないのです。では、物語が人に伝わるということは... アクションをひとつひとつやりきり、緩急をつけて連動させていくことで、物語は見る側にみえてきます。
目次へ戻る6. スピーチ 賛成 vs 反対
役作りを濃密にするには、その人格の表裏を戯曲から探ることです。このエクササイズは、いくつかの課題について、賛成派と反対派のスピーチを自分で作り、スケールの大きな場でそれを世界中に向けて自己の言葉で発信する体験をするものです。表題は21世紀の日本を生きる我々にとって、考えさせられる課題を選びます。例えば、「原子力発電」「赤ちゃんポスト」「死刑制度」など。生徒は各々テーマを選び、はっきりとした意思を持った声と言葉で発信することを習得します。これが出来て初めて、戯曲の中のキャラクターとして、相手との葛藤を演じることが出来るのです。
目次へ戻る7. アクションのクレッシェンド だべる 話す 議論する 喧嘩する
いよいよ相手との対話でのエクササイズに入ります。設定は生徒が作ります。そして、4つのアクション to chat (だべる) to talk (話す)to discuss (議論する)to fight (喧嘩する)これを徐々にクレッシェンドして相手との葛藤を作り出します。たとえば、場所は都内の小さなアパート、キャラクターはルームシェアをしている女子学生、生徒はリハーサルをやりますが、それにとらわれずに相手とのやりとりの中でアクションが大きくなっていきます。ここで大切なのは、高次の自我を持つこと。無意識下の自己に意識を向けられる状態で進みます。これにはヴォイスワークや身体ワークも必ず役に立つわけです。ただ感情的に演じるのではなく、観客も同感し同体験出来る演技になります。
目次へ戻る8. 戯曲解釈・目的+障害=アクション
戯曲はほとんどが対話によって構成されます。では、人はなぜ対話するのでしょうか。そこからひもとき、キャラクターが相手に対する目的をみつけ、そこに立ちはだかる障害をみつけます。人はそれを達成する、もしくは諦めるまで対話は続きます。これがシーンです。わかりやすく言えば、子供は母親に対して、飢えを満たすために、クッキーをねだります。母親は、だめ(障害)といいます。子供は達成するために、アクションを変化させます。
頼む、泣く、地団駄踏む、しかし相手の障害は変わらず「だめ」だった場合、丁寧にお願いするというアクションによって、母親は、はい!と言って手渡します。これで子供の目的は達成します。
シーンはじつにシンプルです。ややこしくする必要はなく、むしろ簡潔に演じ手の意思をまとめることで、そのシーンがはっきりと見えてきます。
目次へ戻る9. シーンワーク 身体と声とアクションの合致
シーンの目的、障害、アクションを選び取ったら、今度はシーンワークのキャラクター同士のアクションをブレイクダウンしてきます。戯曲をいきなり理解しようとしても、膨大なセリフとイメージに溺れます。それをシーンごとに分析し、咀嚼して嚥下出来るように、分析していきます。いざ、演じるときには、書いてあるセリフでやりとりをすると、大抵それに甘えてしまいます。そうではなく、その言語の後ろにある意思、イメージ、アクションを明確にし、身体と言語を合致させて演じます。その身体的なセンセイションをなくさずに今度はセリフで演じます。そうすることで、言葉の真の意味、キャラクターがこの戯曲の状況下で相手に何がしたいのかが、身をもって理解出来るのです。
目次へ戻る10. モノローグワーク 「ハムレット」 アクション=教える
シェークスピアに挑戦します。課題はモノローグ。そして、アクションは「教える」です。有名なハムレットのモノローグを介して、真の演技とは、そして膨大な言葉に耽溺せず、明快な意思を相手に送り出します。
目次へ戻る11. チェーホフ「かもめ」シーンにみる葛藤とアクション
ロシアの劇作家チェーホフの「かもめ」です。この戯曲を解釈し、冒頭のシーンをそれぞれ演じつつエクササイズします。これまで長期クラスでやってきたことの集大成です。
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