2022年9月25日~11月1日までの1週間、
スコットランドオークニー島にある、Kristin Linklater Voice Center(以下、KLVC) にて、日本人資格講師登坂倫子による、日本語でのリンクレイターヴォイス基礎コースワークショップが行われました。そのレポートです。
コロナ禍の下、社会は直接的に話すこと、触れることを、避けてきました。それは命を守る行為である一方で、知らず知らずのうちに、人間の5感の「視覚」のみがフル回転になり、我々が「感じるとる事」に変化が起きています。海を越えてリンクレイターヴォイスの聖地、オークニー島に行くことは、今一度、ヴォイスワークとは何か、リンクレイターヴォイスワークの真髄に立ち返るべきものでした。今回は、ロシア上空は飛行出来ないために、南まわりのドーハ、スコットランドのエジンバラで乗り換え、小さなプロペラ機でオークニー島に渡りました。
今回のワークショップの特徴は、リンクレイターヴォイスを「日本語」で行うという事です。参加者は日本から4名、エジンバラから1名、日本からの見学者1名の、計6名の参加になりました。このスタジオは、ヴォイスワークに革命を起こした”freeing the natural voice”の著者である、故クリスティン・リンクレイターが、2014年に建てたものです。
コロナ禍以前は、ここに世界中から受講者が訪れていました。
クリスティンの偉業の一つは、世界中で資格講師を育てたことです。残念ながら2020年6月5日に、彼女は急逝。各国の資格講師やKLVCのスタッフは一丸となって、スタジオの継続に努めました。蛮勇とも言える今回の日本語によるワークショップは、一年近くかけて、知恵を絞って計画されました。
ここ、北の果てのオークニー島の天候は変わりやすく、特に風や雨は激しく、受講者達はここに来ること自体に大自然との関わりを感じずにはいられません。案の定船で来る予定の受講者は真夜中の到着になりましたが、心暖かなスタッフが車で深夜でも港に迎えに行ってくれます。スタジオマネージャーのKennyです。
9月25日、波濤万里、一人を除いた受講者が集まりました。この日は旅路を労い、顔合わせも兼ねての手料理のウェルカムディナーが待っています。1週間寝食共にした学びに向けて守ること、食事や掃除当番なども確認します。スタジオには現地の言葉BOTHYという宿泊施設も併設されています。受講者は安心して個人のスペースも持つことができます。
見知らぬ同士が、これから声を通して分かち合い、共同作業を行うこと、そして個としての己に向き合っていくこと。私たちの声の冒険の旅が始まりました。
ふと、気づくのです。このように食べ、笑い、語ることを、私達はどれだけ忘れていたのでしょう….。