Linklater Voice学びのプロセス
リンクレイターヴォイス基本長期クラスでは、これら12の項目を半年から9ヶ月かけて習得していきます。新しいクラスの募集はNewsでお知らせしています。
1. ヴォイスの成り立ちとそれを邪魔するもの・身体の認識
赤ちゃんの頃は皆、声は自由でした。
それは脳のvoice (非言語)部分とspeach (言語)部分を司る脳梁がまだ作られておらず、感覚は左右の脳を自由に行き来出来たのです。これを、共感覚といいます。
しかし、7歳ころ(言語を習得する頃)に左右をわける脳梁が完成すると、自然人は声を聴覚のみで扱うようになってしまいます。これを再び自由な頃に戻すには、意識と無意識の領域にアクセスが必要になってきます。
では、あなたの声はいつ、何によって不自由になっていったのでしょうか?それには、言語を派生するプロセスを理解する必要があります。
その過程は、視覚的に相手を見る。相手を脳で認識する。脳に相手に○○したいという思考が起きる。その指令が脳から脊椎を通ってシグナル(impulse)が走る、呼吸が起きる、外に出ていく息が声帯を震わせ振動を起こす。振動は共鳴体に広がる。唇にそれを届く。口の中の8つのパートがくっつき子音、くっつかないと母音になり、言語編集し、言葉になる。
これを、瞬時に行っているのです。しかも無意識に。この過程のどこかで、人は他者によって声を不自由にしてしまいます。その最たるものが、呼吸の停止です。そして、声の土台である息が不足したまま、声を出そうとする。つまり、余計なことをしてしまうのです。
最大の障害は、「緊張」です。身体に宿ってしまった「緊張」を解くために、緩んだ状態、リラクゼイション(弛緩)を体感していきます。
そして、まずは呼吸を自由にするために、すべてのシグナルの通り道、脊椎を活性化していきます。脳からのシグナル(impulse)が通る脊椎の認識です。
自分では見えないし、触ることの出来ない脊椎をペアワークによって、視覚化、触覚化していきます。
骨格を理解して、様々なパートに意識を満たし、順番にリラックスしていくのを体感します。
目次へ戻る2. 呼吸の認識と解放 〜風の行き来〜
声を自由にするには、まず呼吸を自由にすることが必要です。リラックスした状態で、無意識下の呼吸に意識を向けていきます。
横隔膜の位置は、肋骨の一番下にピタっとついている一枚のドーム型の円形の筋肉です。繰り返し繰り返しイメージさせていきます。無意識下の呼吸は、身体のインナーがリラックスすることが次第にわかってきます。
横隔膜もまた、緊張とリラクゼイションを繰り返しているのです。
声は外からのイメージによって始まり、その過程はすべて身体の中を通って、最終的に外に出ていきます。身体の中、無意識下の領域にアクセスするには、イメージワークが大きく影響を与えることが出来ます。
特に呼吸を起こす横隔膜をイメージ化して、無意識下に意識を向けていきます。
声のベースは呼吸なのです。横隔膜を抽象化、具象化していくには、イメージが有効です。
身体のリラクゼイションと息の開放を同時に行っていきます。
このときも常に骨格と横隔膜に意識を向けます。
インナーがリラックした状態で外に開放されていく息はそのまま、振動音(バイブレイション)になります。横隔膜のセンターに触れるイメージで音を身体内で触覚化するのです。
音の触覚化 あなたの中にある「生まれつき持っている声」への体験になります。これがまず自分の音の核になっていきます。
目次へ戻る3. ハミング
身体のセンターで起こった音は、言語編成するときには唇に宿り、バイブレイションはそこで増えます。これがハミングです。
口の中をリラックスしたハミングはバイブレイションを感知しやすくします。
手を使って口の中の各部位を理解させてから、一番有効な口の中でオレンジを喰むように空間を作ったハミングを使っていきます。
音を触覚化、視覚化することで、自己の声は新しい感覚で通常のパターンから新しい気づきにつながっていきます。他者の身体を使ってバイブレイションを感知するワークです。
骨、空洞がわかり、より声がどのように広がっているかわかります。
手で自分の音を触覚していきます。バイブレイションで顔を洗うように。
そして、感知出来た振動を、今度は唇を開くことで、音は外に逃れていきます。音が開放され、リリースされていきます。
目次へ戻る4. フロアーワーク・「立つ」という過程
音に触れ、ハミングで感知し、外に開放する。
これは、まさに言語の基本運動です。
ここではそれを重力から開放されたフロアーワークで、様々な身体に響くことを体感していきます。
これは、フロアーで斜めのストレッチをしながらのワークです。
このときは、バイブレイションは斜めの川の流れをイメージし、水流が音の粒子になっていきます。
バナナストレッチ。身体のセンターからバナナのように反り返ることで、音も一緒に広がっていきます。ダンゴムシのように丸まることによって、重力で脊椎は伸び、背中が広くなります。長くなった脊椎を音は巡ります。
ダンゴムシから骨盤の重さをフロアーに許して、脊椎は長く伸びたまま音を巡らせます。
音の通り道は尾てい骨、仙骨、腰椎、胸椎、7つの頚椎、そして頭蓋骨、最後に口からリリースを繰り返します。音を感知しながら、立ち上がる過程を体験していきます。
最終的に立ち上がったときの音に、大きな変化、新しい気づきに繋がります。
目次へ戻る5. 新しい視点での脊椎・呼吸と反射と脊椎
これまでずっとやってきた脊椎の認識を、ここで新たな視点からワークします。四つん這いです。そして、ペアワークでお互いの骨を学習します。
脊椎の一番下になる尾てい骨を上下させることから始まります。尾てい骨から順番に下から椎骨ひとつひとつにアクセスし、上、下、への動きの意思を送ります。
そうすることで、脊椎は丸まり、反り返ります。その動きの先端にあるのが、頭蓋骨です。
この脊椎の下からの動きは、しいては呼吸とともに動く脊椎の動きを教えてくれて、結果呼吸の動きに沿ったエクササイズで声を発信出来るのです。そして、脊椎の下から上に走る指令は、「反射」によるシグナル(impulse)の動きと同じです。野生のころの反射を身体に思い出させてくれるエクササイズなのです。
目次へ戻る6. 音の水門を開ける。顎、舌、軟口蓋
声を邪魔してしまうものは、何をするかというと、不足した呼吸を補おうとしたり、反射的に出る声を封じてしまいます。
まるで水門を開けるように、この呼吸の通り道を邪魔するものを、気付き取り除いていきます。
最初は顎です。顎を解剖学的に理解しましょう。顎は上顎と下顎が顎関節でつながっています。
ほとんどの人が顎=下顎のみと思い込んでしまっています。これでは音は下に落ちていってしまいます。
上顎と下顎の動きを理解したあと、顎の緊張をとるために、下顎を軽くシェイクしながら、息は上顎の丸天井を超えるようにリリースします。そのまま息は音になり、音は下顎に落ちることなく前方に届きます。
このとき、大切なのは、お腹を柔らかく
風の行き来のように息は横隔膜からリリースされること。笑うように上顎のスペースを広げ、意思を「顎の丸天井を超えてリリース」と、明確にさせます。
顎と呼吸は関係ないことを身体に理解させていきます。
結果、声は驚くように変化します。
顎がリラックスして、口腔の後ろ側のスペースが広がったところで、舌を学習します。舌は筋肉です。そして意外にも舌を扱う脳のスペースはかなりの広範囲です。舌はお利口さんなので、不足した呼吸の代行、もしくは補助をしようとします。結果ヴォイスの邪魔をしてしまいます。
なので、ここでは講師の手を舌にみなして、舌に脳からのメッセージを繰り返し、繰り返し送りつつ、舌が頑張ってやってきたおせっかいを補正していくのです。呼吸が舌と無関係なのだと理解し始めると、たちどころに声は自由になり、言語も明確になります。
口腔の後ろ側のスペースが広がり、舌がリラックス出来たら、音程に影響を強く与える軟口蓋のエクササイズに入ります。
通常触ることの無い軟口蓋を鏡で認識し、息が外に出ているときに、意図的に釣り上げることが出来るように、エクササイズを続けます。
鏡を手放しても、自動的に声が前に出るときに軟口蓋が柔軟に上がるようになれば、次へのプロセス、中高音にもアクセスが出来るようになるのです。
舌がリラックスしたところで、軟口蓋(ソフトパレット)に入ります。
軟口蓋の動きが悪いと、ピッチに明らかに影響が出ます。まず自分の軟口蓋を鏡とライトで視覚化し、息が外に出ていくときに意識的に上にあげられるようにします。
そうすることで、口の後ろ側のスペースは息=声が出ていくときに、軟口蓋を下げることなく声はリリースされます。
これまでほとんど無意識下だった軟口蓋は、声を発するときにスペースを提供し、それは息を上に送り出す天井扉のような役割を果たします。
目次へ戻る8. 共鳴体・胸、口、歯
ここまではリラクゼイション重視でエクササイズをやってきました。
いよいよここからは、身体の共鳴体により反響させていきます。
まずは、ダイナミックな共鳴体、胸です。
肋骨という大きな骨とその中の共鳴体。身体の共鳴体の低音部になります。
首の後ろが短くならないようにしながら、
胴体の底から自分の身体に煙突のような空洞をイメージして、天井を向けて深い紫色の息で塗るように。その紫の息は音になり、音は胸に
深く響き出します。胸から口、そして歯も共鳴体です。その音を作るというよりは、共鳴体の形が音を編成していく、音は各共鳴体に宿り反響します。
声の反響を助けるのに、スイングを使っていきます。
重力と抗重力、重さと弾み、勢いは音をより反響させていきます。
腕のスイングは地球サイズの大きな弧を描くように。
胸、口、歯に響く音は、それぞれにムードとペースを持っています。
日本の民話や伝承にある言葉を使いながらワークしていきます。
鬼になったり、一寸法師になったり、あるときは場に虹を描き、紅葉を蹴散らかし…。
このような遊びは子供の頃に思い切りやっていたことを、生徒たちは思い出します。
目次へ戻る9. 肋骨の認識・ブレスパワー
ここからは中高音域、高音域に入りますが、そのまえに必要なことは、声の燃料である息、ブレスパワーです。
中高音域に行くための肺の準備のため、肋骨の認識をします。
ペアーワークで肋骨を3Dで理解します。全面、側面、背面。触感でその動きを明確に体感し、イメージ出来ます。息をリリースするのと共に、手の平の下の肋骨がまるで崩れ落ちるようなイメージで。肋骨の下に密接している大きな臓器、肺に沢山の息が入るようになります。
肋間筋のストレットをして、肋骨の前面、側面、背面を広げます。
そして、大きな息、中位の息、小刻みな息、をイメージワークと共に腹筋や喉を緊張させずに、常にインナーはリラックスした状態で、エクササイズをしていきます。
呼吸の底力がついたら、次の段階の、声を中高音に響かせる準備が出来ました。
目次へ戻る10. 中高音域・副鼻腔、頬骨、鼻梁
まず最初に、人間の内面を隠してしまう顔の表情筋を柔らかくし、それを様々な方向に部分運動出来るようにします。そうすることで、硬い顔の筋肉が中高音域の共鳴体に響くバイブレイションを固めて封じてしまうことを防ぐことが出来ます。
指を頬骨に当てて響かします。
そうすることで、副鼻腔の筋肉が動き始めます。上下上下、舌や呼吸と分離して息、声は前に出ていきます。上下を動かした後は、顔の斜めの筋肉を利用します。この筋肉のアイソレーションが、中高音域の声を弾き飛ばす役割に繋がります
軟口蓋をアップさせて、口の後方スペースに光を当てるイメージで。音は副鼻腔を通って前に響き出します。息を上に通す役目の軟口蓋は手のひらと連動させ、よくストレッチさせていきます。その次に鼻梁を響かせます。鼻の奥の角のようになったこの共鳴体は、非常にパワフルな場所であり、話す音域の最高音域になります。軟口蓋をわざと締めて鼻声を作り、そこに宿った強烈なバイブレイションを頬骨の上から鼻梁に移動させていきます。
目次へ戻る11. 音域・ファルセット・滑舌
いよいよ音域を全身に広げます。身体を昔風のゴンドラ型エレベーターがごっとんごっとんと各階止まりになるように、音を下から最高音まで各階止まりのように上げていきます。そして、ファルセット(頭声)です。これで全身の共鳴体に音が経過することになります。
さあ、これで3-4オクターブの言語音域の道筋がたちました。
そして、自由になった音域は自由な言語に編成されます。口腔の8つの部位の2つがくっついて、子音になります。くっつかないと母音になります。母音は体全体を一本の樹にたとえて、
上から下まで鳴らします。子音は口腔の中でくっつく2つの部位の部分運動を繰り返し、繰り返し、行っていきます。
ヴォイスワークと平行して、テキストワークをやります。講師と対面して言霊を受ける。題材は自分の今の心に響いた一片の詩です。それこそが、自分の心情を外にリリースする芸術の源になります。
目次へ戻る12. テキストワーク 作品発表
各自の心に響いた詩を花束にして、作品を作ります。
登坂倫子による演出で、心情から浮かび上がる自己は、声と動きとなって、様々な芸術に変換していきます。
内と外、自己と他者、演じ手と観客、コミュニケイションが始まります。
新しい自分に出会い、その人が輝く瞬間はいつでも美しいのです。 目次へ戻る